地元・沼津で「もふもふだら?」という着ぐるみイベントを3回開催しました。 このイベントがどんな経緯で生まれ、どんな思いで立ち上げたのか、そしてどうやって出来たのか振り返ってみようと思います。
なぜ開催を思い立ったのか
今やイベントやオフ会は、数え切れないほど各地で開かれています。そんな中で「それでも自分でやってみよう」と思ったのは、大きくわけて2つの理由がありました。
ひとつ目は、自分の事情。
仕事のタイミングや、時間的な制約などでなかなかイベントに参加出来ない…。行きたくても行けないもどかしさの中、SNSには楽しそうな写真が次々と流れてきます。
「行けないなら、行けるイベントを作れば良いのでは?」そう思い立った瞬間、「自給自足」のイベント構想が頭の中で動き出しました。
……なんて、文章ではキレイに言えますが、別の言い方をすれば「周りがよもぎに合わせるイベント」という発想でもあります。
ふたつ目は、地元の空白
全国のあちこちでイベントが開かれている一方、私の地元である沼津では開催が途絶えていました。
静岡の東部から、ふらっと参加できる気軽なイベントが消えてしまった。ならば、その場所をもう一度つくればいい。そう思ったのです。
宇宙戦艦ヤマトの「誰かがこれをやらねばならぬ」ではないですが、「なら自分が動こう」という感覚でした。
この二つの思いを抱えて、「じゃあ、やってみよう!」と動き出したのです。
開催に向けての準備
本来であれば、他のイベントでボランティアやスタッフとして経験を積んでから、自分のイベントを立ち上げる。それが「安全な地図」なのかもしれません。
でも、「もふもふだら?」は、そんな経験ゼロの状態からの完全な見切り発車スタートでした。 右も左も分からないまま進める準備は大変でしたが、そのぶん学びも多く、ひとつひとつの工程がとても大切な時間になりました。
名前のこと
よし、やるぞ!と思い立ったのはいいものの、私はまずカタチから入るタイプ。 というわけで、最初に取りかかったのはイベントの名前決めでした。
せっかく地元でやるなら、ローカル感がほしい。そんな思いで、いろいろと頭を悩ませます。 ケモノが関係するイベントであることが一目でわかって、かわいい響き(完全に私の主観ですが)で、しかもキャッチーで覚えやすい…。 メモ帳に候補を書き出しては眺め、また書き足していく。
そんな作業を繰り返していたとき、ふっと口から出たひと言。
「もふもふだら?」
静岡県の方言で、語尾に「〜だら?」とつけると、「〜でしょ?」や「〜じゃない?」という柔らかい問いかけになります。 「もふもふだら?」は直訳すると「もふもふでしょ?」という感じ。 ケモノイベントであることがひと目で分かって、しかも地元らしい言葉が入っている。 かわいくて、ちょっとユルい響きも気に入りました。
もっとも、「もふもふだら?」と聞いて、「もふもふしながら、だらだら過ごすオフ会?」と思った人もいるみたいですが… まあ、それもあながち間違いではないかもしれません。
そして「沼津でやっているよ」というのがわかりやすいように、後付けで「In 沼津」と付けました。これが、「もふもふだら? In 沼津」という名前の由来です。

どの地域でやる?
次に決めたのは、「どこの地域で開催するか」。
開催地を選ぶにあたって、まず頭に浮かんだのはもちろん地元である「沼津」。 ただ、最初から「沼津」一本に絞っていたわけではなく、近隣地域も候補に入れてメリットとデメリットを検討しました。
- 三島 —— 東海道線・東海道新幹線の停車駅であり、アクセス抜群。駅前も栄えていて、利便性が高い。
- 長泉 —— ここ数年で驚くほど発展し、新しい施設も多い。ただ、鉄道アクセスが心配。
- 富士 —— 大小さまざまな施設があり、ロケーションとしては申し分なし。
いろいろな候補地を検討したものの、最終的に戻ってきたのは、やはり「沼津」でした。
理由は、単なる地元だからではありません。 仕事でもプライベートでも、さまざまな立場の人たちと関わる中で、自然と「沼津に貢献したい」という思いが強くなっていきました。 沼津を知ってほしい。沼津に来てほしい——そんな気持ちが、じわじわと確信に変わっていったのです。
沼津にはネガティブな話題も少なくありません。 生まれてからずっと住んでいますが、人口は減り続け、町並みも年々寂しくなっていくという現実があります。
そんな中、「ラブライブ!サンシャイン!!」というアニメが沼津を舞台にしたことで、全国からファンの方々がこの街を訪れ、楽しんでいる姿を目にしました。 あの光景は、自分の中で確かに何かを変えました。もし、自分が大好きな “ケモノ” で、この街に人々が集まってくれるなら、それ以上の喜びはない…。そう思ったのです。
施設探し
「沼津でやる」と決まったら、次は会場探しです。
『どんな会場を用意したらいいんだろう…』と、わからないなりにも自分の中でいくつか条件を決めていました。
- まずはスモールスタートにしたいので、巨大すぎないこと。
- メイン会場と更衣室を分けるため、同じフロアで2部屋を借りられること。
- 空調が個別で調節できること。
- 車でも鉄道でもアクセス面で不便が無いこと
インターネットでひたすら施設を検索し、モニターに穴が空くんじゃないかと思うほどページを読みあさりました。 条件ははっきりしているのに、探してみると「ここは広さはちょうどいいけど、アクセスが良くない」とか「こっちは部屋数はあるけど、広さが狭い」と、あっちつかず、こっちつかず。 各施設の「ここはいい」「ここは惜しい」と思うポイントを一つずつリストにしていく。そんな日々が続きました。
沼津商工会議所さんとの出会い
そんなある日、ふと目にとまったのが「沼津商工会議所」さんの貸し会議室のページでした。
広さもアクセスも、かなり希望に近い施設。 数部屋が1フロアに固まっているのも条件にぴったりでした。 しかもそこは、前を通るたびに「デカいけど何の建物なんだろう…」と思っていた、ずっと気になっていた場所でした。
そもそも商工会議所とは何か。正直、名前の響きから「毎日、朝から晩まで経営者が会議しているところ」くらいの認識しかありませんでした。 調べてみると、その役割は中小企業の支援や地域産業の活性化など、「商工会議所法」という法律に基づき、地域のための公的な活動を行う団体であることがわかりました。
……そんなお堅い団体に、趣味イベントを持ち込んで大丈夫なのか?
とはいえ、掲載されていた設備やレイアウト、立地は、どう考えても理想に近い。
半分不安に思いながらも、「いや、もしかしたら話を聞いてくれるかもしれない」と、勇気を出して問い合わせてみることに。 メールでは、開催したいイベントの概要に加え、ホームページだけでは判断できなかった点を質問しました。
その後、イベント開催の意向は汲んでいただけたものの、「具体像を深めたい」との返答。そこで、他イベントのサイトや写真、想定規模などを添えて、改めて説明しました。
いや、やっぱりダメだよなぁ。
そう思っていた矢先、「よろしければ、一度下見に来ませんか?」という返事が届きました。
止まっていた時計の針が一秒だけ進んだような、そんな嬉しい気持ちに包まれました。
会場の下見
せっかくご提案いただいたので、下見の日程を決め、沼津商工会議所さんにお邪魔することになりました。
自動ドアをくぐると、綺麗で広々としたロビー。地域のビジネスや資格講座の案内ポスターが並ぶ、まさに「経営者のための施設」という雰囲気です。
…どう考えても、“もふもふ”という空気ではない。
この場に着ぐるみが集まる未来を想像しながら、少しだけ場違いな気分になっていました。
担当者様に挨拶をし、さっそく大会議室を下見することに。
案内されながら「エレベーターが2機あるなら、着ぐるみ参加者が多くても心配なさそうだな」と、早くも当日の動線を想像してしまいます。
大会議室の扉を開けていただき、いざ中へ。木の装飾が洋風の雰囲気を漂わせる広々とした空間に、整然と並ぶ机。大きな窓から差し込む光のおかげで、思った以上に明るい印象でした。
担当者様から「着ぐるみって、みんな自分で作っているんですか?」と聞かれて説明したり、雑談も交えつつ、会場の設備を一通り案内していただきました。
申し込み
そして、設備も条件も申し分なく、「ここでやろう」と心の中で即決。その日のうちに申込書を書き上げ、担当者様に提出しました。 ペンを置いた瞬間、イベントの輪郭がはっきりと現実になった気がしました。
申し込みを提出した際、「こうした内容でお貸しするのは初めてなので、稟議が必要になります」とのこと。イベントの目的や集客方法などをまとめてほしいとお願いされ、メールで詳細を提出しました。
そのとき、ふと頭に浮かんだ光景。偉い人たちが長いテーブルを囲み、「もふもふって何だ?」と真剣に議論している様子。もちろん、完全に私の勝手な想像です。
数日後、ご担当者様の尽力もあって稟議が無事に通り、「お貸し出しできます」とのご連絡をいただきました。
「もふもふだら?」が、ついに本当に動き始める。そんなワクワクと、不安が入り混じった複雑な気持ちでいっぱいになりました。
(準備編へ続く… 筆が進んだら投稿予定)